ある日、毛の長いネコがやってきて言った。
「毛玉ができているんだ。切ってくれないかな。」
一見ふわふわな胸元の毛をなでてみると
たしかに小さくごろりと何かがあたる。しかもふたつ。
顔まわりの毛を梳くといつも怒り出すネコに向って
「だから日頃から櫛をいれておけばいいのに....」
と、ぶつぶつ言いながら、絡まった和毛にハサミを入れる。
皮を傷つけないようにゆっくりと。
ふたつは、もとでつながっていて、ネコから切りはなすと
どこかでみたような形をなしていた。
かたちにそって、指でなぞってみると
それはみるみるうちに立派なヒゲとなった。

 

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